[stacked books]読書:『紙の動物園』

『紙の動物園』(ケン・リュウ著)を読みました。

人気のSF作家、ケン・リュウさんの短編集です。表題作『紙の動物園』は母と息子の切ない物語で、数十ページの短い作品なのですが、とても奥深い内容で感動しました。こういう物語との出会いがあるので、読書はやめられません。

冒頭、「あれ、これSFなのかな?」という思いにかられますが、ちょっとしたミスディレクションを挟み、「ああ、折り紙の動物たちが動き出すというのがSF要素か」と思うのですが、このことも文中で曖昧になり、もやもやしながら読み進むと、後半、もうSFかどうかなんてどうでもよくなって感動する。という感じでした。短い作品ですので是非読んでみてほしい作品です。

後半、なんとなく流れがわかってくる段階で、せつなすぎてその先を読みたくないという気持ちになりました。完全に主人公の少年に感情移入してしまい、彼の後悔が自分のもののように感じられてしまいます。

まさに、後悔先に立たず、という物語です。親子の話ということで、自分に照らしてみたとき、たとえば子どもが悪さをして叱った後など、険悪とまではいかないまでも、なんとなくよくない空気がしばらく続くことがあります。このようなときは、なるべく早く仲直りするように努めていますが、今回、この『紙の動物園』を読んでそのことについて、焦燥感のようなものを感じました。

叱ったほうも叱られたほうも、プライド的なものは忘れて、なるべく早く仲直りするようにしよう。人はだれでも、どんなに気をつけていても、自分のせいじゃなくても、いつ死んでしまうか分からない。たとえば、明日の朝会社に行くとき、車に轢かれるかもしれないし、電車のホームから落ちるかもしれないし、大きな地震で死んでしまうかもしれない。それはしょうがないけれど、その時、もし2人の仲が悪いままだったらものすごく辛いだろう。

こういうことは忘れずにいなければ、と感じた読書体験でした。

以上です。(ま)

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