ま:makito
先日、外国人観光客の方にひどい仕打ちをしてしまったんです。
仕事帰りに新宿まで帰ってきて、丸ノ内線に乗り換えて帰ろうとしていたときに、夜の9時ぐらいだったと思うんですけど、電車のドアが閉まる直前、「ドアが閉まります」っていうアナウンスの途中に、外国人の女の子2人組、たぶん20代後半ぐらいの観光に来ているアメリカ系の子たちが走って電車に乗り込んできました。そして、その子たちがスマホの画面を見せながら、僕にこう聞いたんです
『ナカノシンバシ、イキマス?』
み:mikami
はいはい。
ま:
で、僕は新中野で降りるから、「荻窪行き」に乗っているわけです。新宿からそのまんま直通ですね。
み:
そうですね。
ま:
でも、中野新橋にいきたい場合は、手前の駅で乗り換えないといけないわけですね。
み:
そう、中野坂上でね。
ま:
それで、シンキングタイムがドアが閉まるわずかの間だったということもあって、頭の中がぐるぐる回ってしまって、『行くは行くけど、中野新橋は中野坂上で乗り換えないといけなくて・・・』というのをどう教えてあげればよいかわからなくなってきて。
み:
なるほど(笑)
ま:
正解としては、『行くよ』って言ってあげればいいんです。『乗りなよ』って。乗った後で、『中野新橋に行くには、中野坂上で乗り換えないといけなくて・・・』と説明してあげれば大正解なんですけど。
み:
たしかにそうですね。
ま:
でも、そこで僕、全部完璧に答えようとしてしまったがゆえに、あの・・・わからなくなっちゃって、出た言葉が 『ノー』 だったんです。
『ナカノシンバシ、イキマス?』って聞かれて、
『ノー』って答えちゃったんです。
み:
なるほどこれは難しいですね。間違ってはいない。
ま:
そうなんです。間違ってはいない。
『No, but ・・・』って続ければいいんだけど、『No』って言った瞬間に、その女の子たちもドアが閉まりかけてるのはわかってるから、『Oh…』って言って、出て行っちゃたんです。
み:
うーん。。
ま:
で、電車のドアが閉まるんです。それで、僕もう、ものすごい後悔して。
み:
(笑)
ま:
あんなに後悔したのは、少なくとも2017年では一番後悔したし、5年ぐらい振り返っても一番の後悔具合だなと思って。
み:
そんなにですか。
ま:
というのも、一応英語を勉強しているじゃないですか。オンライン英会話とかもやって、道を尋ねられたときとかに備えていたわけですよ、これまで。
み:
はいはい。
ま:
もし、あのまま『乗りなよ』ってちゃんと言えてたら、『中野坂上で向かいの電車に乗り換えるんだよ』ぐらい言えるんですよ、英語で。まさにこれまでの僕の頑張りが全部出せるタイミングだったわけですね。それを、『No』の一言で終わらせてしまってたんですよ。
み:
あー、なるほど。
ま:
そして、彼女たちのあのガッカリした表情。ドアが閉まったあと、『どうする…?』っていう表情で標識なんかを見上げる彼女たちのことを横目に見ながら電車が走り出すときの僕の気持ちですよね。
み:
(笑)
ま:
しかも、まだ夜9時ごろだから、人がいっぱい乗ってるんですよ。それで結構、女の子たち大きい声で僕に聞いていたから、まわりにも聞こえていたはずなんです。
だから、僕が『No』っていたときに、何人かはきっと、『No じゃねえだろ!』って心の中でツッコんでたと思うんです。
み:
それはたしかにキツイですね(笑)。
ま:
そもそも女の子たちの質問は英語でもなかったわけですから。『ナカノシンバシ、イキマス?』って日本語で聞かれてるのに。
その状況で、電車のドアが閉まったときの僕の心の行き場のなさ、わかります?
み:
いやー、それは確かに。そのダブルコンボはキツイ。。
ま:
もう、ある意味トリプルコンボですね。女の子たちには申し訳ないし、自分のふがいなさにも腹が立つし、僕ずっと窓の外向いてましたけど、後ろからは『なんであいつNoって言ったんだ?』っていう視線が突き刺さりまくってるわけですからね。
み:
いやでもこれ、間違ってもないわけじゃないですか。さっき言ったとおり。一本で行けるやつ(中野富士見町行き)もあるし、乗り換えなきゃいけないほう(荻窪行き)もあるし。
ま:
そうなんですけど、直通で行けるほうの中野富士見町行きは、たまにしか来ないですよね。
み:
たしかにそうですね。
ま:
そう、だから中野坂上乗換えがスタンダードなわけだから、それをちゃんと教えてあげないといけなかったんですね。
み:
なるほど。
ま:
もうつらすぎて、そのあと家着いてから奥さんにこのこと話しましたからね。こういうことがあったって。
み:
僕にもメール来ましたしね(笑)。
ま:
そうでした(笑)。
み:
よっぽどショックだったんですね。
ま:
外国人に道を尋ねられるとか、そういうシチュエーションが来た時に、絶対にカッコつけずに単語をバンバン繰り出して、文法が無茶苦茶でもいいから、とにかく話して助けてあげようって心に決めていたんです。
み:
なるほど。
でも、これフォローしたいんですけど、やっぱり時間が限られていたって言うのが厳しかったんじゃないですか。閉まる瞬間ですからね。
ま:
そうですね、焦ってたので。
み:
そりゃあしょうがないですよ。
ま:
でもね、その降りたあとを想像するじゃないですか。女の子たちが。
きっと、『おかしいなぁ…』って思うわけですよ。なんでダメだったんだろうなと思って、駅員さんとか他のお客さんにもう1回聞くでしょうね。中野新橋行きたいんだけど、って。
そしたら、『ああ、次の電車に乗って中野坂上っていう駅で乗換えたらいいよ』って教えてくれるでしょうね。場合によっては、『ついてきなよ』ぐらいのことを言ってくれるやさしい人もいるかもしれない。
その時に、彼女たち、僕のことどう思ったかなぁって。考えちゃうんですよね。
み:
たしかにね。
ま:
『あいつ、I don’t know. じゃなくて No. って言ったぞ!』って思ってんじゃないかなと思って。
み:
でもまあ次回につなげていくしかないですね。あそこで乗り換えに迷う人多いですから。
ま:
そうですね。ちょっとつらい話でした。
み:
まあ、ひどいことをしたって言うからもっとアレかと思ったら、思いのほかいい話で安心しましたけど。
(end)
収録エピソード
【#010 ”when i got a podcast i got a place to go”】 の 00:03:10 あたりで話している内容です。
